NASDA/DLR共同ロボット実験結果(速報)

1999/04/21
NASDA ETS-VIIプロジェクト
文責:小田 光茂(ロボット実験PI)

1.実験計画の概容(詳細は、こちら

本共同実験は、NASDAと当時のDARA(ドイツ宇宙事業団)との間で署名・交換されたMOU(了解覚え書き)に基づき実施されたもので、その骨子は、NASDAはETS-VIIを使用したロボット実験機会をDARAに提供し、DARAが製作した地上装置をNASDAの筑波宇宙センタに持込むことにより、同装置を使用した共同実験を実施することである。

実際の作業は、DARAと合併して誕生したDLR(ドイツ航空宇宙センタ)により行われ、実験そのものは、ミュンヘン郊外にあるDLRのロボット/システムダイナミクス研究所、及びドルトムント大学ロボット研究所(IRF)の研究チームにより行われた。

実験は、19999年4月19日(月)から21日(水)にかけて実施され、この間、DLR、及びIRFがNASDA筑波宇宙センタに持込んだ実験装置よりETS-VII搭載ロボットアームを遠隔制御することにより行われた。
DLR/IRFが持込んだ機材(WS×1、PC×4)
左奥がNASDAのロボット実験運用設備
実験の様子

2.実施した実験内容、及び結果の概要

(1)ダイナミックモーションシミュレータの機能性能評価実験(DLR担当)

宇宙ロボットが衛星上で動作する場合、ロボットアームの動作反力により、衛星姿勢に変動が現れる。軌道上の人工衛星には、ロボットアームからの反力に加え、衛星の姿勢制御用リアクションホイールの角運動量、衛星の形状が非対象なことに起因する重力傾度トルク等、様々な力が働く。幸い、我が国はこれまでの多くの衛星開発を通じて衛星の姿勢制御/ダイナミクスに関する充分な技術蓄積ができているため、それなりの技術力を有していれば、ロボットアームがETS-VII上である動作をした場合、衛星の姿勢がどうなるかは比較的容易に答えを出すことができる。また、ETS-VIIにはこの姿勢変動を抑制するための衛星姿勢とロボットの協調制御の機能が組み込まれている。

しかしながら、ドイツにはその様な技術蓄積はまだ無いと言わざるを得ない。DLRの実験は、自ら製作したロボット、及び衛星のダイナミクスをシミュレーションするソフトウエアの機能・性能を実際の衛星であるETS-VIIを用いて検証しようとするものである。

実験に際し、ETS-VII搭載ロボットアームへの動作指令は、DLRの地上装置で生成され、NASDAのロボット実験運用設備経由でETS-VIIに送られた。NASDAは、衛星の姿勢運動の状態を監視すると共に、衛星の姿勢等のデータを彼らの評価のために提供した。

シミュレータの精度評価自体は彼らの仕事であるが、NASDAとしてもロボットアーム動作時の衛星の姿勢運動、及び姿勢制御がNASDAの予想の範囲内であることを確認することにより、ETS-VIIの設計の妥当性が確認されたものと確認している。

(2) ロボット動作環境モデルの較正(補正):DLR/IRF担当

遠隔地にあるロボットに対して作業指示を与える場合、通信時間遅れ等のため、ロボットへの動作指令の妥当性(ロボットが目標位置に到達したかどうかなど)が判りにくい。そのため、コンピュータグラフィックス等により、ロボットアームが動作する環境(操作対象物の形状、位置等)を精密にモデル化して、同モデルの上でロボットへの操作指令を与えるのが一般的である。NASDAのロボット実験、及び国内機関のロボット実験においても各種の方法により、モデルと実環境のズレの補正を行っているが、本共同実験では、ロボットアーム先端に取り付けられている手先カメラからの画像により、補正を行った。本補正は、次に示す遠隔操作実験が正常に実施された(直径18.6mmの穴に直径18mmのペグ(棒)を挿入する作業等が非常にスムーズに行えた)ことからして、正常に実施されたと考えてよいと共に、ETS-VII搭載ロボットアームの制御精度が非常に高いことが再確認されたと考えてよい。

(3)バーチャルリアリティによる衛星搭載ロボットの遠隔制御 (IRF担当)

ロボットへの作業内容の教示の仕方には各種の方法がある。

NASDAの場合、大半の作業はフローチャート形式に示され、自動的に実行される電子手順書により行う「自動操作」で行い、自動操作が困難な作業はジョイステイックを使用した遠隔操作を行っている。これは、作業はできるだけ小人数で簡単に行えた方が良いとの立場に基づくものである。

IRFが使用したのは、Helmet mount display、及び data grobe と呼ばれるバーチャルリアリティ技術である。Helmet mount display にはロボットアームの動作環境が3次元で示され、data grobe を操作することにより、ロボットに作業内容(把持するもの、移動先等)を教える。例えば、視野内にある機器を手で握ることにより、ロボットに同機器を把持する様に教える等である。(写真参照)
実験では、ロボットアームの先端にタスクボード操作用ツールを取付け、さらに同ツールを使用してスライドハンドルを操作する等の作業が行われた。これらの作業は全て順調に行われた。

また、バーチャルリアリティによる作業指示と並行して、ロボットアームの動作経路上に障害物がある場合の自動認識、及び同障害物を自動的に回避する実験が行われ、いずれも正常に行われた。

なお、バーチャルリアリティによるロボットの操作には、操作性、同技術の限界等の観点で、ロボットの研究者間でも賛否があり、ETS-VIIのロボット実験に参加している国内の機関は、いずれも同技術は使用していないのが実状である。
データグローブを使用しての操作 ヘルメットマウントディスプレイの表示例

3.今回のNASDA/DLR共同ロボット実験の成果

今回の共同実験の成果は、ドイツ側からすると、宇宙ロボットの実験を実際の宇宙ロボットを使用して行えたことが最大の成果であろう。宇宙ロボットを実験する機会は非常に限られており、ドイツとしては、1993年にスペースラブD2でロボット工学実験(ROTEX)を実施したのが最初で、今回の実験は2回目のものである。

一方、NASDA側からすると、今回の共同実験は、以下の点で成果があった。

4.関連リンク