98年11月のロボット実験結果 (実験運用実績

改訂記録:1998/11/24:11月10〜12の実験結果を記載
            12/09:11月25〜27の実験結果を掲載

(実験運用の概要)
ETS-VIIは98年10月26日から11月6日まで周期的な発生電力の低下を補うためのロールバイアス運用を行いました。(実験運用時間
その後、11月10日から12日までNASDAの遠隔制御実験を行いました。
11月16日の週は、17〜18日に獅子座流星群との遭遇が予想されていたため、不測の事態を回避するために実験運用を休止しました。その間を利用して翌週以降の実験手順書の検証作業他を行いました。(詳細はこちら
ロボット実験は、11月25日より再開し、25〜26日はNAL/CRLのロボット実験を11月27日にはNASDAの遠隔制御実験を行いました。(詳細はこちら


11月第2週(10日〜12日)の実験結果 実験運用時間

可視帯 作業内容/結果
10日 #1 搭載S/Wの転送
#2 NASA側の通信設備の異常のため運用できず。
#3 ロボットアームの展開、初期設定
#4 遠隔操作習熟(位置合わせ)
#5 同上(姿勢合わせ)
#6 同上(GPF挿入)
#7 ロボットアーム収納2
11日 #1 遠隔操作(GPF挿入)
#2 遠隔操作(TBTL把持、押し付け動作)
#3 遠隔操作(倣い計測)
#4 遠隔操作(倣い計測) #3パスの継続
#5 自動操作によるスライドハンドル操作
#6 遠隔操作習熟(op4〜op6)。ロボットアーム収納2
12日 #1 TBTL取り付け。遠隔操作(スライドハンドル操作)
#2 遠隔操作(スライドハンドル操作)
#3 遠隔操作(スライドハンドル操作)
#4 遠隔操作(スライドハンドル操作)
#5 遠隔操作(スライドハンドル操作)。TBTL収納
#6 ロボットアーム収納1

(11月10日の実験のまとめ)
この日は、3人のオペレータがロボット実験運用設備のハンドコントローラを操作して、搭載ロボットアーム先端の位置合わせ、姿勢合わせ、及びGPFへの挿入ができる様に習熟作業を行った。各オペレータは前日までに実験運用設備内蔵の搭載ロボット系シミュレータを使用して訓練を行っていたため、この日の衛星搭載ロボットアームの遠隔操作においても大きな問題もなく、比較的容易に遠隔操作が行われた。

(11月11日の実験のまとめ)
この日は、ロボットアームの先端にタスクボード操作用のツール(TBTL)を取り付け、同ツール先端のペグをタスクボード上の面に押し付け、押し付け力が指定された範囲になる様にロボットアームの制御を遠隔操作で行った。力の制御は搭載系の自動処理と、地上系のオペレータの操作の2ケースで実施した。後者の場合では、各オペレータは衛星から送られてくる力トルクセンサの情報を見ながらハンドコントローラを操作しているが、ETS-VII搭載ロボットアームの遠隔操作には6秒程度の通信時間遅れが含まれているため、前者と比べて、搭載ロボット系の機能の違いにより操作性に明らかな相違が見られた。

(11月12日の実験のまとめ)
この日は、ロボットアームの先端に取り付けたタスクボード操作用のツール(TBTL)のペグでスライドハンドルを操作する実験を行った。ロボットアームの座標系とスライドハンドルの動作方向が一致している場合には作業は極めて容易だったが、ロボットアーム先端の姿勢を傾け、ロボットアームの動作方向を2方向に常時制御しなればいけない様にすると作業性が劣化することが実験で確認された。また、その際においても、予測シミュレーションをCGにオーバーレイさせることで作業性が確保されることを確認した。

上記の3日間のデータは今後、詳細に評価した上で、次回以降の遠隔操作実験に反映する。


11月第4週のロボット実験結果 実験運用時間

11月25日(水)

実験パス 機関 内容
1 NASDA ロボットアーム動作準備
2,3 NAL ジョイスティックを使用した遠隔操作によるトラス構造物の展開,及び組立
4,5 CRL アンテナ結合機構同士の間にミスアライメント(位置姿勢のズレ)がある状態でもロボットアームによるアンテナ結合機構の結合(アンテナ組立を模擬)が可能なことの確認実験
6 NASDA RW(リアクションホイール)による姿勢制御状態での衛星搭載ロボットアームと衛星姿勢の協調制御実験(ロボットアームの動作が低速な場合)

11月26日

実験パス 機関 内容
1 NASDA RCS(ガスジェットスラスタ)による姿勢制御状態での衛星搭載ロボットアームと衛星姿勢の協調制御実験(ロボットアームの動作が高速な場合)
2,3 NAL ジョイスティックを使用した遠隔操作によるトラス構造物の収納,及び分解
4,5 CRL アンテナ結合機構同士の間にミスアライメント(位置姿勢のズレ)がある状態でもロボットアームによるアンテナ結合機構の結合(アンテナ組立を模擬)が可能なことの確認実験
6 NASDA RW(リアクションホイール)による姿勢制御状態での衛星搭載ロボットアームと衛星姿勢の協調制御実験(ロボットアームの動作が高速な場合)

11月27日

実験パス 機関 内容
1 NASDA アーム起動準備作業
2 NASDA タスクボード操作用ツールの取り付け、遠隔操作実験/ケース3(OP2)
3 NASDA 遠隔操作実験/ケース2(OP2〜OP3)、ケース3(OP3)
4 NASDA 遠隔操作実験/ケース1(OP1〜OP3)
5 NASDA 遠隔操作実験/ケース2(OP1)、タスクボード操作用ツール収納
6 NASDA フリーモーション状態での衛星の姿勢変動を最小とするロボット制御実験


11月27日第2可視時間帯における遠隔操作実験の様子(タスクボード表面への倣い操作)

上記実験の詳細は以下の通りです。

●ならい面を用いた遠隔操作実験
 宇宙用のロボットでは通信遅延のために、地上のオペレータの操作は非常に難しくなります。そこで、オペレータに計算機シミュレーションで予測したアームの動きを提示することで、通信遅延による操作の難しさを解消する方法が必要不可欠です。さらに、このような難しい操作は搭載系の計算機にまかせてしまう方法もあります。搭載系が自律的なほどオペレータにとっては、作業負荷の観点から望ましいのですが、現実的には計算機の処理能力や、安全性などから本格的な自律ロボットの登場はまだ先の話です。
 そこで、アームサインカーブ状の局面(ならい面)に沿って一定の力(20N以上30N以内)で押しつける操作を3人のオペレータが実施しました。条件は、(1)力の予測シミュレーションデータを提示するケースと(2)提示しないケース、また、(3)力を自動的に印可するロジックを搭載系の計算機に組み込んでありますので、この機能を使ったケースの3ケースです。
 実験結果は(3)のケースが最も簡単に操作でき、力を目標通り操作できましたが、(1)のケースも(3)とほぼ同等な操作性能を確保できました。しかし、(2)のケースは操作は難しく、力を目標通り操作できませんでした。

 なお、ロボットにとりつけられた関節の制御系では、定常的な角度偏差をなくすように角度の制御誤差を積分して、これにフィードバック制御をおこなっています。これを、積分補償といいますが、積分補償の制御目標値は定期的に0クリアされます。力を印可している時に、積分補償の0クリアがおこると、瞬間的に力が抜け、ゆっくりと回復します。ケース(2)ではオペレータは力の値を見て操作を行っていますが、積分補償の0クリアにより力が変化したのか、自分の操作により力が変化したのかわからず混乱して、誤った操作をしてしまうことがあるということがわかりました。そこで、今回の実験では、力の時刻歴と力の変化率を見せることにより、オペレータが混乱しないような工夫も加えて実験をしました。

●フリーモーション時の衛星姿勢変動を最小化させるアーム軌道実験ETS-VIIには衛星の本体の姿勢を制御可能な計算機が2式あります。1つは、RVD用のGCCで、1つは、RBT実験時などに使用されるAOCEです。浮遊するターゲット衛星を捕獲するときには、計算機を切り替えて運用することが必要で、制御系の干渉を防ぐことを考えて数分の単位で衛星の姿勢を制御せずに飛行させなければなりません。これをフリーモーションといいます。
 衛星をフリーモーションの状態でアームを動作させると、アームの動作の反力により衛星の姿勢が変動してしまいます。しかし、アームの動作の開始点と終了点が同一でもアームの軌道により衛星の姿勢変動量が変わります。アームの軌道によっては、衛星の姿勢変動を0にすることができます。計算を簡単にするため、軌道を平面内の動作に限り、アームの質量が先端に集中しているという仮定のもとで姿勢変動を最小化する軌道を計算し、実験によりその効果を検証しました。
 実験の結果、姿勢変動を最小にする楕円軌道は、過渡的な姿勢変動は大きくなるものの、アームの動作終了点では姿勢変動が小さくなることが確認できました。